きょうだいベイズ問題(4)
問題(1)
2人きょうだいの子供のうち、1人が男の子の場合、もう1人が女の子である確率はいくらか?
そもそも二人きょうだいの性別の組み合わせの全パターンはどういうものか。表にする。
表(1)
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男 | 男 | 女 | 女 |
男 | 女 | 男 | 女 |
younger | younger | younger | younger |
1/4 | 1/4 | 1/4 | 1/4 |
第一子に男性が生まれる確率と女性が生まれる確率はそれぞれ 1/2 。
第一子が男性、第二子も男性の確率は 1/2 * 1/2 = 1/4 。
他の項目も同じ。なので、j, k, l, m それぞれが成立する確率は等しい。
で、私は問題(1)をどう解釈したか。
文章の中の「1人が」「もう1人が」の並びから順番を想定してしまって、それが足枷になっていたんですね。
がっちり頭にフレームを付けられていた。
つまり、こういう状況を想像していた。
問題(6)
世界中の2人きょうだいのペアを一つの広場に集め、きょうだい同士で手を繋いでもらう。
目隠しをしたあなたが、その広場からランダムに一人の人間を選んだ。
その人を見たゲームマスターの Charley は「この人は男性です」とあなたにヒントを伝えた。
このとき、彼が手を繋いでいる相手が女性である確率はいくらか?
解答する。
それぞれの人に名前を付けて表にしてみる。
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男(N) | 男(O) | 女(P) | 女(Q) |
男(R) | 女(S) | 男(T) | 女(U) |
younger | younger | younger | younger |
問題の条件から、どちらも女性のペアである m は除外できる。
全パターンは N→R, R→N, O→S, T→P だから4パターン。
そのうち相手が女性なのは O→S と T→P の2パターン。
2/4 = 1/2
ゆえに 1/2 。
この問題と前のエントリの次の問題を混同していたんですね。
問題(5)
世界中の2人きょうだいのペアを一つの広場に集め、きょうだい同士で手を繋いでもらう。
目隠しをしたあなたが、その広場からランダムに一つペアを選んだ。
そのペアを見たゲームマスターの Charley は「このペアは(女, 女)のペアではありません」とあなたにヒントを伝えた。
このとき、このペアが(男, 男)のペアではない確率はいくらか?
解答する。
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男 | 男 | 女 | 女 |
男 | 女 | 男 | 女 |
younger | younger | younger | younger |
これが全パターン。
問題の条件から m は除外できる。
残る三つの全パターンのうち、(男, 男)ではないパターンは k と l の2つ。
ゆえに 2/3 。
さらに、以前問題(6)の状況を視覚的に判りやすくしようと別の表を書いた。
問題文の「一人が男の子の場合」を ● で表現する。
こういうものだ。
表(2)
u | v | w | x | y | z |
---|---|---|---|---|---|
older | older | older | older | older | older |
男● | 男 | 男● | 女 | 女 | 女 |
男 | 男● | 女 | 男● | 女 | 女 |
younger | younger | younger | younger | younger | younger |
これは問題(6)専用の表であり、現実に起こりうる二人きょうだいの性別組み合わせの全パターンを表わしたものではない。
この表(2)と表(1)を混同してしまった。
これで極度の混乱に陥ってしまったんですね。
……というわけで最初のエントリの主張は撤回します。
2/3 という答えも判りました。
修正は、やるなら全面改稿が必要なレベルで意味がないので、やりません。
赤っ恥エントリとして残しておきます。
お付き合いしていただいた皆さん、ありがとうございました。
きょうだいベイズ問題(3)
あー、わかった。理解した。
2/3 派の言い分を理解した。今度こそ完全に理解した。
例題を出す。
問題(3)
Alpha さんはコイン投げが大好きです。最近は一枚のコインを三回投げたものを一つのグループにして記録しています。
Alpha さんは順番のない(表, 表, 裏)という組み合わせに神妙な美を見出し、それを Bravo と名付けました。
1グループの単位を「ターン」、1グループの中の第一投, 第二投, 第三投をそれぞれ c, d, e とする。
いま Alpha さんは 100 ターン目のコイン投げを終えました。
101 ターン目のコイン投げで、二回表が出た場合、残りの一回で裏が出て、このグループが Bravo になる確率はいくらでしょう?
二通りの解釈がある。それぞれを F 解釈, G 解釈とする。
F 解釈は最後のセンテンスをこう解釈する。
いま Alpha さんは 101 ターン目のコイン投げを実際に始めて、二回(すなわち c と d )で表が出た。
残りの一回で裏が出て、このグループが Bravo になる確率はいくらでしょう?
解答してみよう。
このコイン投げで起こりうる全パターンはこれ。
c | d | e | |
---|---|---|---|
表 | 表 | 表 | s |
表 | 表 | 裏 | t |
表 | 裏 | 表 | u |
表 | 裏 | 裏 | v |
裏 | 表 | 表 | w |
裏 | 表 | 裏 | x |
裏 | 裏 | 表 | y |
裏 | 裏 | 裏 | z |
問題の条件から u から z は除外できる。
残りの全パターンは s と t の2パターン。
そのうち e が裏なのは t の1パターン。
ゆえに 1/2 。
G 解釈は最後のセンテンスをこう解釈する。
Alpha さんは 100 ターン目のコイン投げを終えた後、コインにはまったく触らず、架空の世界のコイン投げを想像している。
c, d, e の順番に関係なく表が二回出ている想像世界の中で、残りの一回で裏が出て、このグループが Bravo になる確率はいくらでしょう?
もう一度表を貼る。
c | d | e | |
---|---|---|---|
表 | 表 | 表 | s |
表 | 表 | 裏 | t |
表 | 裏 | 表 | u |
表 | 裏 | 裏 | v |
裏 | 表 | 表 | w |
裏 | 表 | 裏 | x |
裏 | 裏 | 表 | y |
裏 | 裏 | 裏 | z |
これが全パターン。
この中で表が2回以上出ているのは、s と t と u と w の4パターン。
そのうち残りの一回が裏なのは、t と u と w の3パターン。
ゆえに 3/4 。
面倒だから細かい論証は省くが、F 解釈がきょうだいベイズ問題の 1/2 派に、G 解釈が 2/3 派に対応する。
ということはこの G 解釈をきょうだいベイズ問題に適応すればいいわけだ。
そういうわけなんだけど、正面から攻められなかったので、まず問題(2)を答えが 2/3 になる形に改変したい。
問題(4)
大きさも形も同じ、金貨と銀貨を一枚づつ、合計2枚用意します。
あなたは目隠しされ、テーブルの前の椅子に座っています。
ゲームマスターの Charley はこの2枚のコインを同時にテーブルに投げ、結果を見て「この2枚のコインは(裏, 裏)の状態ではない」というヒントをあなたに伝えました。
このとき2枚のコインが(表, 表)の状態ではない確率はいくらか?
全パターンを表にするとこう。
q | r | s | t |
---|---|---|---|
金貨 | 金貨 | 金貨 | 金貨 |
表 | 表 | 裏 | 裏 |
表 | 裏 | 表 | 裏 |
銀貨 | 銀貨 | 銀貨 | 銀貨 |
問題の条件から t は除外できる。
残りの全パターンは q と r と s の3パターン。
そのうち(表, 表)ではないのは、r と s の2パターン。
ゆえに 2/3 。
これを足掛かりに最初の問題を、答えが 2/3 になるような明快な文章に改変したい。
問題(5)
世界中の2人きょうだいのペアを一つの広場に集め、きょうだい同士で手を繋いでもらう。
目隠しをしたあなたが、その広場からランダムに一つペアを選んだ。
そのペアを見たゲームマスターの Charley は「このペアは(女, 女)のペアではありません」とあなたにヒントを伝えた。
このとき、このペアが(男, 男)のペアではない確率はいくらか?
表にするとこうだ。
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男 | 男 | 女 | 女 |
男 | 女 | 男 | 女 |
younger | younger | younger | younger |
問題の条件からどちらも女性のペアである m は除外できる。
全パターンは j と k と l の3パターン。
そのうち(男, 男)のペアではないパターンは k と l の2パターン。
ゆえに 2/3 。
こういうことですよね!
きょうだいベイズ問題(2)
文章で人にアイディアを伝えるのって難しいんですね。
めげずにやっていきたい。
別の書き方で 2/3 派に反論していきたい。
まず問題と 2/3 派の模範解答を再掲する。
問題
2人きょうだいの子供のうち、1人が男の子の場合、もう1人が女の子である確率はいくらか?
解答
すべてのパターンはこう。
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男 | 男 | 女 | 女 |
男 | 女 | 男 | 女 |
younger | younger | younger | younger |
問題の条件からどちらも女性のペアである m は除外できる。
全パターンは j と k と l の3パターン。
そのうちもう一人が女の子のパターンは k と l の2パターン。
ゆえに 2/3 。
ここから反論
この問題を見て素直に表を書くならこうだろう。
g | h | i |
---|---|---|
男 | 男 | 女 |
男 | 女 | 女 |
表(2)は、表(1)の中の h(男, 女)を、
同じ男女のペアと言っても(兄, 妹)と(姉, 弟)は別物だから二つのパターンに分けなければならない
という意図で分けたものだろう。
つまり、問題文の「1人が男の子の場合」が兄を指すパターンと、「1人が男の子の場合」が弟を指すパターンを分けているのだ。
しかし、冷静に考えてほしい。
(男, 女)ペアを上記の方法で分けるなら(男, 男)ペアも同じ方法で分けてカウントしなければカウント漏れが起こってしまう。
つまり、正しい表はこうだ。
u | v | w | x | y | z |
---|---|---|---|---|---|
older | older | older | older | older | older |
男● | 男 | 男● | 女 | 女 | 女 |
男 | 男● | 女 | 男● | 女 | 女 |
younger | younger | younger | younger | younger | younger |
では、この表で考えてみよう。
まず問題の条件からどちらも女のペアである y と z は除外できる。
「一人が男の子の場合」の全パターンは u から x の4パターン。
そのうち「もう一人が女の子」のパターンは w と x の2パターン。
2/4 = 1/2
答えは 1/2 。
やはり 1/2 である。
(男, 女)のペアを(兄, 妹)と(姉, 弟)に分けるならば、表(5)にしなければならない。
分けないならば表(1)にしなければならない。そしてどちらも答えは 1/2 。
どうでしょう。納得いただけたでしょうか。
きょうだいベイズ問題の答えは 2/3 ではない
ネット上でたびたび話題になる問題がある。
問題(1)
2人きょうだいの子供のうち、1人が男の子の場合、もう1人が女の子である確率はいくらか?
適当な名前がないので、いま私が「きょうだいベイズ問題」と名付けた。
ネット上の議論では答えは 2/3 だというのが定説になっている。
例えばこのサイト
http://taustation.com/conditional-probability-brother/
では「区別なしの場合」というセクションでこれを扱っており、2/3 としている。
最近つらつら考えて
2/3 は間違い。正解は 1/2 だ。
という結論に達した。2/3 派がどこをどう間違っているのかも判った。
「観点の違いであって 1/2 も 2/3 もどちらも正しい」という意見もちょくちょく見るが、あれも間違いである。
1/2 でしかありえない。
この件については「完全に理解した」と言っていいと思う。結論というか真理である。
そういうわけで頭の整理がてら記事にして、この知見を共有したい。
で、多くの人は「2/3 派はどう間違っているのか」という話に興味があると思うが、議論の都合上、先に 1/2 派の主張を紹介したい。
1/2 派の主張は大きく二つに分けられる。それぞれ A, B 説とする。
この A, B 説はたまたま結論が一致したというものではなく、二つとも議論の過程も正しい。
議論の過程が正しく、結論も正しい。つまり、世界と一致した真理である。
A 説
そもそも各妊娠・出産は独立の事象であり、男の子が生まれる確率と女の子が生まれる確率はそれぞれ 1/2 。
これは二人のペアがきょうだいだろうがそうで無かろうが成り立つ。
ゆえに件の問題の答えは 1/2 。
うん、完璧ですね。
B 説
二人の人間で一つのペアを作る場合、成立しうる性別の組み合わせの全パターンは次の三つである。
これは二人のペアがきょうだいのときでも勿論成立する。
表(1)
g | h | i |
---|---|---|
男 | 男 | 女 |
男 | 女 | 女 |
そもそも大前提として確率の問題はすべて
(求めたい特定の事象のパターン) / (成立しうる全パターン)
で求められる。
問題の条件から i(女, 女)の可能性は除外できる。
全パターンは g(男, 男)と h(男, 女)の2パターン。
そのうち特定の事象のパターンは h(男, 女)の1パターン。
ゆえに 1/2 。
マーヴェラス。
2/3 説
ここでは 2/3 派の主張を紹介し、それに反論して完全に退けようと思う。
だから 1/2 派の私はここでは自分から積極的に主張するものはない。
さて、2/3 派の人は B 説はおかしい、正しくはこうだと言って表を持ち出してくる。
こういうものだ。
表(2)
j | k | l | m |
---|---|---|---|
older | older | older | older |
男 | 男 | 女 | 女 |
男 | 女 | 男 | 女 |
younger | younger | younger | younger |
同じ(男, 女)のペアと言っても(兄, 妹)のペアと(姉, 弟)のペアは別物だろ?
というわけだ。
問題の条件からどちらも女性のペアである m は除外できる。
全パターンは j と k と l の3パターン。
そのうち特定の事象のパターンは k と l の2パターン。
ゆえに 2/3 。
なるほど。こういう表を持ち出されるとなかなかもっともらしく見える。
正面から反論するのは意外と面倒なので、ひとつ例題を出したい。
問題(2)
大きさも形も手触りも同じ、金貨と銀貨を一枚づつ、合計2枚用意する。
Charley はこの2枚のコインを同時に机に投げ、すぐにその上にベールを被せる。
最初から目隠しをされていた Delta が他の人の誘導のもとベールの下に手を入れ、そろそろと指を伸ばし、最初に触れた一枚のコインを引っ張り出す。
そのコインは表だった。
このときもう一枚のコインが裏である確率はいくらか?
さて、あなたはいま目隠しをされている Delta だと想像してほしい。
あなたは目隠しをされているので、自分が引いたコインが金貨か銀貨かは判らない。当然ベールの中のコインが金貨か銀貨かも判らない。
起こりうる全てのパターンはこうだ。
表(3)
n | o | p |
---|---|---|
表 | 表 | 裏 |
表 | 裏 | 裏 |
問題の条件から p(裏, 裏)は除外できる。
全パターンは n(表, 表)と o(表, 裏)の2パターン。
そのうちもう一枚のコインが裏なのは o(表, 裏)の1パターン。
答えは 1/2 。
ここで、この一連の流れを外から見ていた Echo に登場していただこう。
最初の3センテンスは省略する。
そのコインは金貨で表だった。
このときもう一枚のコインが裏である確率はいくらか?
地道に全パターンを列挙していこう。
図にするとこうだ。
表(4)
q | r | s | t |
---|---|---|---|
金貨 | 金貨 | 金貨 | 金貨 |
表 | 表 | 裏 | 裏 |
表 | 裏 | 表 | 裏 |
銀貨 | 銀貨 | 銀貨 | 銀貨 |
問題の条件から金貨が裏の s と t は除外できる。
全パターンは q と r の2パターン。
そのうちもう一枚のコインが裏なのは、r の1パターン。
答えは 1/2 。
ここまで読み進めてきた賢明なる読者諸君はお気づきだろう。
問題(2)は問題(1)の言い替えである。
older か younger かの区別をまとめて長幼属性、金貨か銀貨かの区別をまとめて色属性、男か女かの区別をまとめて性別属性とする。
問題(2)の色属性は問題(1)の長幼属性に、問題(2)の表か裏かは問題(1)の性別属性に対応する。
これで 2/3 派の誤りは明らかだと思う。
問題(1)の前半だけ引用する。
2人きょうだいの子供のうち、1人が男の子の場合(…)
この文章が意味するのは、問題(2)の Delta の視点か Echo の視点か、どちらだろうか。
性別属性と長幼属性は独立なので、性別属性を知らされても長幼属性については何も判らない。blind な状態である。
これは問題(2)の目隠しされた Delta の視点に対応する。
Delta の視点から見える全パターンは表(3)である。これは問題(1)だと表(1)に対応する。
そう、問題(2)の Delta が表(4)を導き出せないように、問題(1)から表(2)は絶対に導き出せないのだ。
これが 2/3 派の誤りである。
では、表(4)は何なのか。表(4)に対応する問題(1)の視点とはどういうものなのか。
表(4)を作った Echo は、コインが表か裏かを見ると必ずそのコインが金貨か銀貨かも判ってしまう。
逆に言えば、コインが金貨か銀貨かを知らずにそのコインが表か裏かを知ることはできない。
これは問題(1)に対応させれば、性別が判れば必ずその子が older か younger かも判ってしまうという状態だ。
そういう可能世界を想像することはできるが、この現実世界はそうなっていない。
問題(1)ではありえない表なのだ。
(しかも、先に見た通り、そういう可能世界でも表(4)から導き出される答えは 1/2 なのだ)
日本人は生まれたときから儒教イデオロギーにどっぷり浸かっているので、二人きょうだいで二人の性別が別のものだと、それが(兄, 妹)なのか(姉, 弟)なのかはっきり区別したがる。
「だって全然違うものじゃないか」というわけだ。
2/3 派はそこに付け込んでしれっと現実には存在しない表を持ち出し、我々を誑かしているのだ。
追記 :
続編書きました。
きょうだいベイズ問題(3) - ChieOsanai’s blog
きょうだいベイズ問題(4) - ChieOsanai’s blog
和風旅館問題の拡張(2)
まずは元の問題。
仲の良い女性5人、男性3人の合わせて8人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性2人のグループが二つ、男性2人のグループが一つ、男性、女性1人づつのグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
答えは 1/5 。解説は省く。
これの部屋の収容人数を大きくする改変問題を考える。
ただし、その中の一つのグループは女性が1人のグループとする。
まず三人部屋バージョン。
仲の良い女性7人、男性5人の合わせて12人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性3人のグループが二つ、男性3人のグループが一つ、女性1人、男性2人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこう。
部屋 A | 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女 |
部屋 C | 女(E), 男(y), 男(Z) |
部屋 D | 男, 男, 男 |
まず女性の声が聞こえたので、男性3人の部屋 D の可能性は除外する。
次に、女性が同室者に声を掛ける全パターンを列挙する。
部屋 A は3人の女性が他の2人に声を掛けるので、3 * 2 の6パターン。
部屋 B は A とまったく同じ。6パターン。
部屋 C は女(E) が男(Y) に声を掛けるパターンと、女(E) が男(Z) に声を掛けるパターンの2パターン。
足し合わせて14パターン。
そのうち相手が男性なのは、E → Y と E → Z の2パターン。
2/14 = 1/7
答えは 1/7 。
次は四人部屋。
仲の良い女性9人、男性7人の合わせて16人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性4人のグループが二つ、男性4人のグループが一つ、女性1人、男性3人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこう。
部屋 A | 女, 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女, 女 |
部屋 C | 女(E), 男, 男, 男 |
部屋 D | 男, 男, 男, 男 |
一般化できないか考える。
部屋の収容人数を n とする。
まず女性の声が聞こえたので、全員男性の部屋 D の可能性は除外する。
次に、女性が同室者に声を掛ける全パターンを列挙する。
部屋 A は n 人の女性がそれぞれ他の n-1 人に声を掛けるので n(n-1) パターン。
部屋 B は A とまったく同じ。n(n-1) パターン。
部屋 C は1人の女性が他の n-1 人に声を掛けるので n-1 パターン。
足し合わせて 2n(n-1) + n-1 パターン。
そのうち相手が男性なのは、部屋 C の女性(E) が他の n-1 人に声を掛けるパターンなので、1 * (n-1) パターン。すなわち n-1 パターン。
すべてのパターンのうち相手が男性のパターンは
n-1 / 2n(n-1) + n-1
n-1 を x とすると
x / 2nx + x
= x / x(2n + 1)
= 1 / 2n+1
ここでも単純な公式が得られた。
これを四人部屋問題に適用すると
1 / 2 * 4 +1
答えは 1/9 。
次は五人部屋問題。
仲の良い女性11人、男性9人の合わせて20人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性5人のグループが二つ、男性5人のグループが一つ、女性1人、男性4人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
公式は 1 / 2n+1 だった( n は部屋の収容人数)
適用する。
1 / 2 * 5 + 1
= 1/11
Q.E.D.
同じ要領で六人部屋問題。
仲の良い女性13人、男性11人の合わせて24人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性6人のグループが二つ、男性6人のグループが一つ、女性1人、男性5人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
答えは 1/13 。
賢明な読者諸君はお気づきだろう。
ここでも答えは
1 / (問題文の女性の人数)
になるのだ。
別の観点から見ると
二人部屋問題の答えは 1/5
三人部屋問題の答えは 1/7
四人部屋問題の答えは 1/9
五人部屋問題の答えは 1/11
六人部屋問題の答えは 1/13
つまり
n 人部屋問題の答えは 1 / 2n+1
問題の構造上、必ず女性は 2n+1 人でなければならないので(そうしないと女性1人の男女混合グループを作れない)、答えは必ず
1 / (問題文の女性の人数)
になるんですね。
試しに、部屋の人数は固定で、部屋の数を増やしたバージョンを考えてみる。
四人部屋で部屋を一つ増やしてみよう。
仲の良い女性13人、男性7人の合わせて20人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性4人のグループが三つ、男性4人のグループが一つ、女性1人、男性3人のグループが一つの、合わせて五つのグループに分かれて五つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこう。
部屋 A | 女, 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女, 女 |
部屋 C | 女, 女, 女, 女 |
部屋 D | 女(F), 男, 男, 男 |
部屋 E | 男, 男, 男, 男 |
これも一般化する。
部屋の収容人数を n とする。
まず女性の声が聞こえたので、全員男性の部屋 E の可能性は除外する。
次に、女性が同室者に声を掛ける全パターンを列挙する。
部屋 A は n 人の女性がそれぞれ他の n-1 人に声を掛けるので n(n-1) パターン。
部屋 B と C は A とまったく同じ。n(n-1) パターン。
部屋 D は1人の女性(F) が他の n-1 人に声を掛けるので 1 * (n-1) パターン。すなわち n-1 パターン。
足し合わせて 3n(n-1) + n-1 パターン。
そのうち相手が男性なのは、部屋 D の n-1 パターン。
すべてのパターンのうち相手が男性のパターンは
n-1 / 3n(n-1) + n-1
n-1 を x とすると
x / 3nx + x
= x / x(3n + 1)
= 1 / 3n+1
これを適用すると
1 / 3 * 4 +1
答えは 1/13 。
これも答えは
1 / (問題文の女性の人数)
の形になっている。
なんともはや。こんな簡単な問題だったのか。
まぁでもこうやって考えたおかげで、部屋の人数をどれだけ増やした問題でも、部屋の数をどれだけ増やした問題でも、即座に答えることができますね。
よしとしましょう。
和風旅館問題の拡張(1)
もともと別の問題を書きたかったのだが、行き掛けの駄賃で続ける。
問題再掲。
仲の良い女性5人、男性3人の合わせて8人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性2人のグループが二つ、男性2人のグループが一つ、男性、女性1人づつのグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
答えは 1/5 。解説は省く。
これの部屋の収容人数を大きくする改変問題を考える。
まず三人部屋のパターン。
仲の良い女性8人、男性4人の合わせて12人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性3人のグループが二つ、男性3人のグループが一つ、男性1人、女性2人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこう。
部屋 A | 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女 |
部屋 C | 女(E), 女(F), 男(Z) |
部屋 D | 男, 男, 男 |
まず女性の声が聞こえたので、男性3人の部屋 D の可能性は除外する。
次に、女性が同室者に声を掛ける全パターンを列挙する。
部屋 A は3人の女性が他の2人に声を掛けるので、3 * 2 の6パターン。
部屋 B は A とまったく同じ。6パターン。
部屋 C は2人の女性が他の2人に声を掛けるので 2 * 2 の4パターン。
足し合わせて16パターン。
そのうち相手が男性なのは、女(E) が男(Z) に声を掛けるパターンと、女(F) が男(Z) に声を掛けるパターンの2パターン。
2/16 = 1/8
答えは 1/8 。
次は四人部屋。
仲の良い女性11人、男性5人の合わせて16人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性4人のグループが二つ、男性4人のグループが一つ、男性1人、女性3人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこう。
部屋 A | 女, 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女, 女 |
部屋 C | 女, 女, 女, 男(Z) |
部屋 D | 男, 男, 男, 男 |
一般化できないか考える。
部屋の収容人数を n とする。
まず女性の声が聞こえたので、全員男性の部屋 D の可能性は除外する。
次に、女性が同室者に声を掛ける全パターンを列挙する。
部屋 A は n 人の女性がそれぞれ他の n-1 人に声を掛けるので n(n-1) パターン。
部屋 B は A とまったく同じ。n(n-1) パターン。
部屋 C は n-1 人の女性がそれぞれ他の n-1 人に声を掛けるので (n-1)^2 パターン。
足し合わせると 2n(n-1) + (n-1)^2 パターン。
そのうち相手が男性なのは、部屋 C の女性 n-1 人がそれぞれ男(Z) に声を掛ける1パターンづつなので、(n-1) * 1 パターン。すなわち n-1 パターン。
すべてのパターンのうち相手が男性のパターンは
n-1 / 2n(n-1) + (n-1)^2
n-1 を x とすると
x / 2nx + x^2
= x / x(2n + x)
= 1 / 2n + x
x を n-1 に戻すと
= 1 / 2n + n-1
= 1 / 3n-1
単純な公式が得られた(!)
これを四人部屋問題に適用すると、
1 / 3 * 4 - 1
答えは 1/11 。
次は五人部屋問題。
仲の良い女性14人、男性6人の合わせて20人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性5人のグループが二つ、男性5人のグループが一つ、男性1人、女性4人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
公式は 1 / 3n-1 だった( n は部屋の収容人数)
適用する。
1 / 3 * 5 - 1
= 1/14
Q.E.D.
同じ要領で六人部屋問題。
仲の良い女性17人、男性7人の合わせて24人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性6人のグループが二つ、男性6人のグループが一つ、男性1人、女性5人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
答えは 1/17 。
画期的な公式じゃないか! 大発見だ!!
……と二十分くらい浮かれていたのだが、答えと問題の文章をよく見比べてほしい。
判りやすいようにそれぞれの問題の冒頭と答えを並べてみよう。
二人部屋問題。
仲の良い女性5人、男性3人の合わせて8人が旅をしている。
答えは 1/5 。
三人部屋問題。
仲の良い女性8人、男性4人の合わせて12人が旅をしている。
答えは 1/8 。
四人部屋問題。
仲の良い女性11人、男性5人の合わせて16人が旅をしている。
答えは 1/11 。
五人部屋問題。
仲の良い女性14人、男性6人の合わせて20人が旅をしている。
答えは 1/14 。
六人部屋問題。
仲の良い女性17人、男性7人の合わせて24人が旅をしている。
答えは 1/17 。
お判りいただけただろうか。
なんのことはない。
答えは
1 / (問題文の女性の人数)
になるのだ!!
……これでもまだ話は終わっていないので、記事を分割する。続きます。
ベイズ問題の考え方(後編)
前回のまとめ
仲の良い女性5人、男性3人の合わせて8人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性2人のグループが二つ、男性2人のグループが一つ、男性、女性1人づつのグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。なお、この時点では旅館の係員はどの人がどの部屋に入っているかは把握していないものとする。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
- 答えは 1/5 である。
- しかし、「1/5 ではなく 1/3 だ!」と主張する人がわりといる。
- いーや、1/3 は間違いだ、という反論を書くぞ。
ここから続き
まずは 1/3 派の主張をまとめてみよう。こんな感じだろうか。
問題を図にするとこうなる。
部屋 A 女, 女 部屋 B 女, 女 部屋 C 女, 男 部屋 D 男, 男 まず女性の声が聞こえたので、男性二人の部屋 D の可能性は除外する。
残り三部屋のうち男性がいるのは一部屋。
ゆえに 1/3 。
なるほど。確かにそう言われると判りやすい。そういうものかと思ってしまう人もいるだろう。
正面から反論するのはちょっと面倒なので、改変した問題を作ってみる。
仲の良い女性8人、男性4人の合わせて12人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性3人のグループが二つ、男性3人のグループが一つ、女性2人、男性1人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこういう感じである。
部屋 A | 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女 |
部屋 C | 女, 女, 男 |
部屋 D | 男, 男, 男 |
どうだろうか。
男性三人の部屋 D を除いた、残りの部屋が三つで、そのうち男性がいるのは一つという部分は変えていないので、最初の問題に 1/3 と答えた人は、この問題にも 1/3 と答えねばならないはずである。
さらに悪いことに、仮に係員がノックしたのが部屋 C だったとしても、出てくる「あなた」は女性である可能性もあるのだ。
1/3 派の人、耐えられますか?
じゃあ、どう考えればいいのか。これも地道に列挙してみる。
まず女性の声が聞こえたので、男性二人の部屋 D の可能性は除外する。
残りの女性8人を E, F, G, H, I, J, K, L, 男性を Z とする。
すなわち、先の図を書き換えるとこうだ。
部屋 A | E, F, G |
---|---|
部屋 B | H, I, J |
部屋 C | K, L, Z |
ここで、女性が同室者に声をかける全パターンを数え上げる。
部屋 A は
- E → F と E → G
- F → E と F → G
- G → E と G → F
の6パターン。
部屋 B は部屋 A と同じなので省略。6パターン。
部屋 C は
- K → L と K → Z
- L → K と L → Z
の4パターン。
足し合わせて16パターンが起こりうる全パターンなので分母は16。
その中で声をかけた相手が男性(矢印の後の項目が Z )なのは K → Z と L → Z の2パターン。分子は2。
2/16 = 1/8
ゆえに答えは 1/8 。
1/8 と 1/3 を通分すると 3/24 と 8/24 。
この問題で 1/3 と答えたら2倍以上も確率を高く見積もっていることになるのだ。
さらにダメ押しでもっと人数を増やしたバージョンを作ってみる。
仲の良い女性29人、男性11人の合わせて40人が旅をしている。夕刻に和風旅館に到着し、女性10人のグループが二つ、男性10人のグループが一つ、女性9人、男性1人のグループが一つの、合わせて四つのグループに分かれて四つの部屋に入った。
一息ついた頃、旅館の係員が無作為に一つの部屋を選んでドアをノックしたところ、中から女性の声で「誰かが訪ねてきたようだけど、いま手が離せないのであなたが開けてあげて」と話しているのが聞こえた。このとき、部屋のドアを開けるのが男性である確率を求めよ。
図にするとこういうことである。
部屋 A | 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女 |
---|---|
部屋 B | 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女 |
部屋 C | 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 女, 男 |
部屋 D | 男, 男, 男, 男, 男, 男, 男, 男, 男, 男 |
これを 1/3 と答える人はいないと思う。(ちなみに、正解は 1/29 )
そして、これが 1/3 ではないということは、翻って最初の問題の答えも 1/3 ではありえないのだ。
どうでしょう。1/3 派の人、納得してもらえたでしょうか。
まとめると、「残りの部屋は三部屋。そのうち男性がいるのは一部屋。ゆえに 1/3 」という雑な考え方ではダメで、部屋の中の性別構成をちゃんと見なければならない、ということですね。